公開
2017-03-15
執筆者
くしをか ( @tubuyaki1go )
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https://twitter.com/tubuyaki1go/status/841645476126457856

電子遊戲讀み物「櫻の木の下には」振り返り

此の作品は梶井基次郎の『櫻の樹の下には』を文章を其の儘に電子遊戲形式にしたものと言ふ事である。

立て上げると冬から春に移り變はるが如き曲と共に開始畫面が表示される。表示される項目は一般的なノベルゲームと等しい。英語・簡體中文・日本語と三種類の表示が選べ、「此の樣な飜譯もDlsiteが自動でしてくれるのか」と感心が鬼なる驚いた次第。先づは設定から――文字送りの速さ等を變へられる電子遊戲ならではの項目がある。此處は皆少し本編を讀み進めて好みを決めると良い。

さて本編を始める――内容に就ては買うてからのお樂しみとしたいので控へますけど、一度に表示される文の量や表示される場所、其の時に鳴らされる曲で讀者を引き込まうとする手管が所々用意されてゐて流石に文章をただ畫面に表示しただけの物とは違ふ。原作を讀んだ作者の感じた作品の風合を演出と言ふ形で具現化した二次創作と言へる。日本語設定であると縱書き表示であるがそれ以外は横書き表示である。自動飜譯の都合で有らうか。

さて、假名遣ひが保たれてゐると言ふ縁で書く運びとなつた當作品であるが、文をその儘に演出を以てプラスアルファを表現する二次創作はやはり面白く、をちこちでどんどん試みられて欲しい形式である。讀者が原作をその儘讀んだ時に受ける物とは異なる感覺であらうから其れはやはり立派な二次創作に分類されるべき物である。一方で假名遣ひに絡めて言へば電子遊戲ならではの「讀者の讀み方を誘導し易い」と言ふ利點があるし、いきなり歴史的假名遣を目の當たりにして讀者が此れを遠ざけると言ふ悲劇が起こる前に、他の手段を以て作品に引き込む事が作品單體で可能なのは遊戲形式の美點である。無論過去の作品の發掘紹介の效能もあらう。内容に殆ど觸れる事が無かつたが原作からして短いので掻摘むのが難しく、先に述べた樣に買うてからのお樂しみと言ふ事で。頒布價格も百圓位やし……最後は君の目で確かめるんだ!(バーサルナイト鈴木)