「あたらしい表記はつかいやすい」、だから「表記が変更されたのはあたりまえだ」と、誰もが自然に思つてゐる。しかし、昭和20年以前、正漢字正假名遣はそれこそ「當り前」に使はれてゐた。今、正漢字正假名遣が「不便」だと感じられるのは、「不正漢字不正かなづかい」が常用されてゐるからである。本書は、國語表記の「變更」が、急進的・實驗的で、それゆゑに甚だ非科學的な一部の言語學者によつて惹起こされたものである事、その結果として出現した「あたらしい表記」が矛盾だらけの代物である事を詳細に述べたものである。殘念ながら、本書は今時の讀者の購讀意欲をそそらない「反動的」な書物であり、恐くはさつぱり賣れないであらう。この正かなづかひによる、恐くは「讀み難い」紹介文をここまで讀んで下さつた方には、何かの縁だと思つて、本書をぜひ購入していただきたい。