現在、世界の牛の九割を占める政治牛に対し、わづか一割未満ながら強烈な存在感を示す文学牛――彼等がこの度、一大決心をしたと言ふ。それは、政治に対抗して、正字を使ふ、と云ふ事である。
なに、ただの駄洒落にすぎまい――さう考へるのが浅はかである。なぜなら、駄洒落はこの世界を支配する原理だからである。全ての駄洒落は宇宙に通ず。絶対的少数派である文学牛は、宇宙の真理に直結する駄洒落に拠る事で、世界への反逆を開始した。
かうした事情も知らぬまま、政治牛たちは今日ものんびり草を食んでゐる。しかし、世界は既に改変されたのだ。いまや、牛の原理は正字である。文学牛達はいづれ正かなに挑戦しようと考へてゐる。
とは言へ、事はさう簡単には運ばない。彼等の前には巨大な壁が立ちはだかつてゐるのだ。屠殺場である。面白うてやがてかなしき文学牛かな。
今日もひぐらしの声がこだまする。かなかなかなかな……。(扇)