2009年デビューのフォルクスワーゲン・ポロ。デザインはワルター・デ・シルヴァ。日本デビュー時は1・4リッター自然吸気エンジンを搭載してゐた。トランスミッションは所謂デュアルクラッチトランスミッション(DCT:フォルクスワーゲンはDSGと称する)。
今乗つてゐるのがポロであり、車検のたびに代車でポロばつかりあてがはれるため、ほぼポロしか知らない。
そんなわけでポロの横断的レビューです。
2010年以降のポロは1・2リッターSOHCのターボエンジン(フォルクスワーゲンの言ふところのTSI)を搭載してゐる。エンジンの排気量を小さくしたため、燃費が有利になつたり、税金を節約したりとメリットが多いが、力がなくなるので、その分をターボで補つてゐる。所謂ダウンサイジングターボ。低速域からトルクを発揮し、より大サイズのエンジンにも劣らない力強さを示す、と車雑誌やウェブサイトの試乗レポートでは好意的に評価された。
実際にはターボラグが目立つエンジンで、発進時には全く力がない。然るに、スピードに乗ると、なかなか速度が落ちず、どこまでもすつ飛んで行くやうな感覚がある。乗りこなすにはいささか慣れが必要で、案外じゃじゃ馬なくるまである。
アクセルを早めに踏み込んでターボを早めに効かせる事が肝要で、ターボが効き始めると急にスピードが出る。制限速度まで一気に加速し、あとは惰性で走らせると燃費が伸びる。
ただし、DSGはトルコンATやCVTのやうな一般的なオートマチックトランスミッションと性格が異り、MTと同じで常にがっちりギアが噛み合つてゐるため、アクセルワークには比較的敏感に反応する。6Rポロの場合、特に低速域でエンジントルクが足らず、DSGの挙動はぎくしゃくしがち。
6Rポロのアキレス腱はこのDSGにあるとされ、故障の報告が非常に多い。1速は発進専用。交通の流れが良いと2速から3速、4速、5速とぽんぽんとギアがあがつていくが、日本の街中では渋滞が多く、2速あたりでもたもたしてしまふ事が多い。MT乗りの人ならわかる筈だが、低速ではクラッチの断続、或は、半クラッチの使用が増え、ギアに負担がかかる。6Rポロの頃のDSGは、どうやらクラッチ板が弱いらしく、ジャダーが発生したり、ギアがつながらなくなったりするトラブルが一時期多かつた。リコールや制御プログラムの修正が繰返されたが、完全には直らないらしい。
うちのポロは2010年に日本に入つてきた最初の頃のハイラインで、ギアのシフトレバーがしかくいタイプ。13000キロほど乗られた程度の、比較的状態の良い個体だつたが、乗り方によつてはジャダーが発生した。
足回りは日本車よりも固めと評されるが、無闇に固いわけではなく、段差をうまくいなして乗り越える。腰高感はあり、コーナリング時にはかなりロールが目立つ。パワーステアリングは電動油圧式で、いくぶんねつとりしてゐるが、割と自然な感覚で扱へる。曲り角やうねうねとうねる道ではくるまをコントロールしづらく感じられるため、十分スピードを落とさなければならない。まつすぐな道ではスピードを上げるほど安定感が増す。
自然、メリハリのきいた運転を強ひられる事になるが、そのためか妙にスポーティな印象を得られるくるまである。故障の多い「ガラスのDSG」もフィーリングだけは一級品。普段からあまり距離を乗らないが、乗る時は長距離を乗り、高速や郊外のバイパスを飛ばす、といつた人なら楽しく乗れるはず。
デ・シルヴァのデザインもおとなしいやうで寧ろ攻撃的な印象があり、性格的にはホットハッチに近い。
車検の代車で乗つた2012年モデルのポロ。シフトレバーがゴルフと同じものに変更されてゐる。足回り等はほとんど同じ。
初期型のハイラインと違つて、アイドリングストップがついてゐる。ブレーキペダルを踏み込むとアイドリングストップが働いてエンジンが止まる。ブレーキをゆるめるとエンジンが始動する。右折時などアイドリングストップを働かせたくなければ、ブレーキペダルを奥まで踏み込まないで少し手前で足を保つておくと良い。
やはり代車で乗つたクロスポロ(年式未確認)。SUV風味のデザインが売りのくるまであり、タイアサイズが多きめなので、ただでさへ標準車でも腰高感があるところが、さらに腰高な印象がある。とは言へ、意識してバランスを調整してあるらしく、乗りにくさはない。エンジン/DSGのフィーリングは標準車と同じ。
うちにきたくるまはミシュランを履いてゐた。コンチネンタルのタイアよりもミシュランのタイアの方が乗り心地はやはらかい感じ。
同じく代車で乗つたブルーGT(年式未確認:時期によりエンジンパワーに差がある)。車高を落とし、ゴルフの1・4リッターターボを積んでゐる。足回りもやや固めに締め上げられてをり、乗り心地は固い。
コンフォートライン/ハイラインと違つてコーナリング時のロールがよく抑へ込まれてをり、うねうねと屈曲した山の登り坂でも思ひ切りアクセルペダルを踏み込める。道路脇の駐車場から歩道を通つて車道に出る時は、鼻面をこすらないか少し心配にはなる。
アイドリングストップ機構を搭載してゐるほか、アクティブシリンダーマネジメント(ACT)機構を搭載してをり、燃費向上がはかられてゐる。ACTは惰性で走つてゐる時に4気筒中の2気筒を休止させて、ガソリンの消費を抑へる仕組み。ふつーにその辺を走つてゐる間にもこまめに働き、がんばつて燃費を向上させようとする。ピストン停止/稼働時にショックを感じさせる事はなく、ダッシュボードの表示を見ないと機構が働いてゐるか何うかはわからない。
2014年にマイナーチェンジしたポロ後期型。フロントのバンパーのデザインの違ひで区別するのがかんたん。前期型(6R)はにこにこ微笑んでゐるのに対し、後期型(6C)はへの字口。
エンジンがDOHC化され、低速トルクが強化されてゐるのが大きな變化。燃費を重視して最大出力が抑へられたグレードが日本には導入されてをり、おかげで6Rのドライヴァはあまり悔しさを感じないで済んだ。低速域でトルクが足らない感じがなくなり、アクセルペダルの操作が全くダイレクトにくるまの速度に反映される。
足回りは可なり抑制の効いたものに変り、ロールが目立たなくなつた。パワーステアリングも電動パワーステアリングに変更。結果、うねうねと曲つた道でも、ドライヴァの意図した通りのコースを正確にトレースして走る。
コントロールのしやすさは抜群。おそろしく扱ひやすいくるまになつた。惜しむらく前期型のやうなスポーティな感覚がなくなつた。楽しいドライヴのためのくるまではなく、常用するための大衆車として完成度を高めたものらしい。DSGにもハードウェアレヴェルで改良が行なはれて、滅多に故障しなくなつたやうだ。一般的な用途でなら6Rよりも6Cのポロを選んだ方が良いだらう。遊びで乗るのなら6Rを選ぶべきだが、ブルーGTを選んでも良いかも知れない。
GTIは乗る機会ナシのためレビューもナシ。そのうち乗れたらまた。