現状、スマートフォンやパソコンに標準装備されてゐる日本語入力ソフトは、正かなづかひには対応してゐないか、極めて不十分な対応に留まってゐます。しかし別売または無料で追加できる日本語入力ソフトウェアにより、「正かなづかひで打って、正かなづかひの漢字仮名交じり文に変換する」といふ日本語入力が実現できます。
画面に表示されたフリック式テンキーを用ゐて、正かなづかひ(舊假名)でキー入力した語を正かなづかひの漢字仮名交じり文に変換できる、正かなづかひ使用者待望のソフトウェアキーボード。「ゐ・ゑ」のキーも用意されてゐる。2023年11月のiPhone版公開に続き、2024年12月にAndroid版が公開された。
〔以下では、Ver.1.0.0(2024年12月時点)に基づいて詳細を解説する〕
設定により、読みの受け付けと字体の対応が変更できる。以下「小書きの入力を省略する」を有効にした状態での、「字體・假名遣ひ」の設定による違ひを、受け付けられる読みと変換の例で示す。
ここで一点注意だが、ATOKの文語モードで行ふやうな「和語は正かなづかひ、漢語は現代仮名遣い」(例へば「せいかなづかひのにゅうりょく」で「正仮名遣ひの入力」となる)といふ読みの入れ方には対応してゐない。つまり正かなづかひで読みを入力して漢語もスムーズに漢字変換するには、字音假名遣の知識も必要になる。字音仮名遣はよく解らん、と字音假名遣をサボってきた俺みたいな人間には中々のハードルだが、これを機に字音假名遣を覚えてしまふのも悪くはないだらう。予測変換機能があるので、熟語の一字目の読みを正しく入れられれば候補に助けられることも多い。字音假名遣については、外部サイト「字音仮名遣い表」〔歴史的仮名遣ひ教室〕を参考にするか、有償アプリ「旺文社国語辞典 第十二版」で語を現代仮名遣いで検索すると良い。
ウェブから新語をモリモリ採り入れてゐるであらうシステム標準の日本語入力と異なり、人名や固有名詞の漢字変換には弱い。また現状は学習機能(頻繁に変換する語を優先する)やユーザー単語登録機能も無い。システム標準の日本語入力を補助的に併用するのが正しい使ひ方であらう。
パソコン用のATOKでは「表現モード」を選ぶ機能があり、そこにある「文語モード」を選んでおくと、正かなづかひで入力できる。文語モードと称されてゐるが、ある程度は口語体にも対応してゐる。なほ字音假名遣への対応は「やう(様)」など一部に留まり、漢語は現代仮名遣いで入力する。例へば「せいかなづかひでにゅうりょく」と読みを打つと「正仮名遣ひで入力」に変換できる。
なほスマホ向けATOKには表現モードの選択が無く、正かなづかひには対応してゐない。
ATOK以外の日本語入力ソフトでも、ユーザー辞書に対応してゐれば多少の制約はあるが正かなづかひでの入力が可能なものがある。詳しくは先代番長のサイトを御覧いただきたい。