世界の言語表記
~“表音主義”は本當に主流?~

投稿日
2023年6月14日
著者
春眠猫 (@kotonopa_cat3)
R
こんにちは。Rと
M
Mなんだぜ。
R
なんかどっかで見たことあるイニシャルな氣がするけど。
M
氣のせゐなんだぜ。
R
それで、けふはどんな話をするの?
M
けふは、世界の言語の表記法について見ていくんだぜ。實は續き物にしようと思ってるけど、本當にさうなるかはわからないんだぜ。
R
あ、さう。(天並感)
M
けふ取り扱ふのは韓國語だぜ。朝鮮語といふ人もゐるな。
R
韓國語といふと漢字廢止したイメージしかないけど、實際はどうなのかしら。
M
實は漢字こそ使はれなくなってるけど、割と傳統的なところもあるんだぜ。
R
さうなの、早速知りたいわ。
M
ぢゃあ、まづ韓國語で使ふ文字について確認しておかう。みなさんもきっとご存知、ハングルだぜ。韓國の國字を使へば、漢字で韓㐎(⿱文乙)とも書ける。
R
記號みたいで不思議な形をしてゐるわよね、どういふ仕組みなのかしら?
M
仕組みは至って簡單、子音を表す部品と母音を表す部品を合體させてるんだぜ。子音で終はる音のときは下に追加で部品をくっつけるぜ。
R
思ったより簡單な仕組みなのね。あれ、この文字は下に2つも部品があるわ。
M
ああ、それは二重パッチム、あとの音が母音で始まる音でないなら、どっちか片方を讀めばいいんだぜ。韓國語は基本的に子音が3個以上連續することはないからな。
R
えー。ぢゃあなんでわざわざこんなものがあるの? 子音が3個以上連續しないなら必要ないぢゃん。
M
いいところに氣付いたな、R。さて、ここからが本題だ。なぜこんな物が必要かと言へば、韓國語の現在の正書法が「形態主義」の立場をとってゐるからだ。
R
形態主義? なにそれ?
M
どうも韓國語についての文脈でしか出てこないので正確に意味を取れてるかはわからないのだが、「同じ語根はできる限り同じ形で書く」、やり方のやうだぜ。
韓國語は英語のやうにリエゾンをよくする言語なのだが、たとへば「體が」は momi と發音するので 모미[モミ](mo-mi) と書いても良ささうなところ、さうはせず 몸이[モㇺ イ](mom-i) と書く。mom が「體」で、i が「が」の意味だな。
もっと複雜な例を擧げると、「踏んだなら」は palpassɯmyɔn みたいに發音するところ、발밧스면[バㇽ バッ ス ミョン](pal-pas-sɯ-myɔn) とは書かず、밟았으면[バㇽㇷ゚ アッㇲ ウ ミョン](palp-ass-ɯ-myɔn) と書く。踏ん-だ-(繫ぎの母音)-なら って感じかな。
R
面白いわね。それぢゃあ、日本語の現代かなのやうに、「どこからか子音が湧いたり、湧かなかったりする」ってことはあまりないのね。
M
さうだぜ。ただし假名と違って、子音を獨立させて書くところが違ふな。日本語はたとへ「笑ふ」が「warah-u」の構造で成り立ってるからと言って、「笑hう」と書いたりはしないからな。ただ、安易に表音主義に流れてないところは正假名っぽいかもしれない。
R
へえ、そんな感じなのね。ところでいつからこんな感じの書き方をするやうになったの?
M
實はこのやうなやり方が固まったのはわりと最近、1933年のことなんだ。そもそもハングルこと訓民正音が發布されたのが1446年、一國家の公用語に使はれてゐる文字としてはかなり新しい方だぜ。發表された最初期は表音主義的に綴られることが多かったやうだ。ただ、16世紀にはもう形態主義的な表記が現れて來てゐる。
まあ、日本でも假名が使はれ出した當初は(當時の)發音通りに書いてたけど、藤原定家や契沖と言った人達の活躍で假名遣ひが認識されるやうになったから、辿った歷史は近いのかも。
R
はえー。ぢゃあこの書き方も傳統あるものなのね。
M
とは言ひたいものの、必ずしも傳統主義って訣でもないらしい。
ハングルが制定された1446年頃には ・(黑丸一つ) で表す「アレア」といふ母音があって、この母音がなくなってしまってからも元々この發音を含んだ單語をこの字を使って綴ってゐたやうだ。(1890年代の「獨立新聞」などに確認できる。)
ただ、この母音は1912年に出された表記法で廢されてしまった。また、かつて dya [デャ] と書かれてゐた音も、[ジャ] ja と發音が同じだからと、자 の方に統一されたものもある。
R
必ずしも傳統主義的ではないのね。まあ、正假名でも奈良時代の母音までは正確に書き分けてる訣ではないらしいし、どこもそんなものか。
M
さうだな、限界はある。それでも、現在の表記方式はかなり洗練されたものと言へるだらう。きっと「基くは「もとづく」で、躓くは「つまずく」なのは何故?」みたいな思ひはせずに濟む。
R
さうね。ただ表面的にわかりやすい書き方よりも、少し慣れが要っても矛盾がなく體系的な書き方の方が有難いわ。
M
うむ、その通りだぜ。
と、いふ訣で、今回は言語表記特輯(?)の第一回(これが最終回になるかは著者のやる氣次第)として、韓國語について取り上げてみたぜ。言語表記保守派からも革新派からも、漢字廢止の強すぎる印象で「言語に對し革新的な態度をとる國」と思はれがちな韓國(/北朝鮮)。しかしかういふ所を見ると、言語革新派が主張しがちな「表音至上主義」は、少なくともこちらの國ではあまり見られないことがわかる。
このシリーズでは、世界の色々な言語の表記法を見ていくことで、自國の言語表記についても、「今一番行はれてゐる方式」が本當に唯一正しいと言へるものなのか考へて見ることを目的とするぜ。
R
シリーズとか言って、どこまで續くのかしらね。それにしても、お鄰の國の言葉なのに、その言語については全然知らなかったわ。どんな言語も、その裏には歷史があるのね。
M
うむ。言語に貴賤なく、言語に歷史あり。人間の文化そのものである言語は、自分のものだらうと、他人のものだらうと、大切にしていきたいものだぜ。
さて、この文章は素人が無い知識を使って書いたものなので、もしかしたら間違ひが多々あるかもしれないから、そこはご容赦願ふぜ。
R
それぢゃあ、またね~