このページは、文章を〝現代仮名遣い〟で書ける人に向けて、漢字仮名交じりの口語文を正かなづかひ(歴史的仮名遣ひ)で書く方法を説明するものです。正かなづかひを実践する初歩としてお役立ていただければ幸ひです。
| ア段 | イ段 | ウ段 | エ段 | オ段 | |
|---|---|---|---|---|---|
| ア行 | あ | い | う | え | お |
| カ行 | か | き | く | け | こ |
| サ行 | さ | し | す | せ | そ |
| タ行 | た | ち | つ | て | と |
| ナ行 | な | に | ぬ | ね | の |
| ハ行 | は | ひ | ふ | へ | ほ |
| マ行 | ま | み | む | め | も |
| ヤ行 | や | い | ゆ | え | よ |
| ラ行 | ら | り | る | れ | ろ |
| ワ行 | わ | ゐ | う | ゑ | を |
まづは、歯抜けではない五十音図を確認しておきませう。図のヤ行に「い・え」、ワ行に「ゐ・う・ゑ」があることを確かめてください。
行と段の考へ方は正かなづかひで大変重要です。縦一列で一行、横一列で一段です。例へばア行は「あいうえお」、ア段は「あかさたなはまやらわ」を指します。
なほ「い・ゐ」、「え・ゑ」はいづれも現代では同じ発音とされますが、正かなづかひは語に随ふ表記法ですから、それぞれを発音ではなく語〔単語〕によって使ひ分けます。また結果的に図では「い・う・え」が二つづつありますが、これは活用語〔一部が変化する語〕の規則を理解する上でも欠かせませんので、どの行からも省けません。
ちなみに「ん」は、どの行や段にも属しないといふ考へ方により図からは除いてゐますが、正かなづかひの表記でも使はれます。
正かなづかひで書くには、まづは語を見分けられる(識別できる)必要があります。語とは、言葉や単語とも呼ばれるものです。一般的な日本語の表記は英語と違って語を空白で区切りませんので、どこからどこまでが一つの語かを見分けられないと国語辞典をひけず、正かなづかひも調べられません。語についておさらひするため、川端康成の『雪国』冒頭より引用した次の例文を見て下さい。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
語を見分ける練習として、まづは例文を文節で区切ってみます。文節とは、文章を形作る小さなまとまりです。「国境のね、長いね、…」のやうに「ね」を足しても文が成り立つ区切り方ができれば、そこが文節の切れ目です。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
※黒い線が文節を示す。
文節で区切れたら、さらにそれぞれの文節を語で区切ってみます。ひとつの文節は、自立語ひとつで出来てゐるか、自立語に付属語が連なった二語以上で出来てゐます。自立語は単独でも文節になりますが、付属語は単独では文節になりません。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
※黒い線が文節、赤い線が語を示す。
これで例文にある語をすべて見分けられました。例文では「国境」「長い」「トンネル」「抜ける」「雪国」「〔〝あった〟の〕ある」が自立語に相当します。一方で「の」「を」「と」「で」「た」が付属語に相当します。
なほ、二語に分けられないやうに見える文節でも「自立語と付属語」に分けられることがあります。例へば例文の「あった」は、「あっ」に変化してゐる自立語の「ある」と、付属語の「た」(過去や完了を示す助動詞)に分けられます。また付属語は、複数の付属語が連なってゐると考へられる場合があります。辞書でひく際には、かうした切り分けを要することがあります。
語を見分けられるやうになったら、それぞれの語が「活用する語」か否かを区別しませう。ここでいふ活用とは、後に続く語によって一部が変化することです。「活用する語」を活用語と言ひます。正かなづかひで書く際には活用語で注意すべきことがありますので、この区別は重要です。
簡単な見分け方としては、一般的に送り仮名をつけて書かれる語は、往々にして活用語です。例へば「長い」なら「長く」に、「抜け」なら「抜き」や「抜く」のやうに変化しえますので、どちらも活用語です。一方で「国境」「トンネル」「雪国」のやうに、漢字やカタカナだけで書ける語は活用語ではありません。
国語辞典を使ふためにも活用語を区別する必要があります。例へば「歩け」を辞書で引くには、終止形〔言ひ切りの形〕の「歩く」に直さなければなりません。
なほ活用語で変化しない部分を語幹と言ひ、変化する部分を活用語尾と言ひます。例へば「あるく(歩く)」であれば、「ある」が語幹、「く」が活用語尾です。少数ですが「ゐる」「みる」「する」など、語幹と活用語尾を区別しない語もあります。
正かなづかひでは、語を現代の発音ではなく語によって書き分けます。例へば〝現代仮名遣い〟で一律に『い』と書く箇所も、正かなづかひでは語によって「い・ひ・ゐ」を使ひ分けます。そのため、できるだけ多くの語を参照できる資料が欠かせません。そこで現代で最も適した資料が、市販の国語辞典です。
一般的な国語辞典には、語の正かなづかひ表記が歴史的仮名遣ひとして載ってゐます。ただし小学生向けの国語辞典には載ってゐませんので、高校生・社会人向けの国語辞典を選ぶ必要があります。
ここでは正かなづかひを調べるのにおすすめの、現在〔二〇二五年九月時点〕において新刊書店で購入しやすい国語辞典を紹介します。いづれも〝現代仮名遣い〟からひくタイプの現代的な国語辞典なので調べやすく、和語の正かなづかひだけでなく漢語の字音仮名遣〔漢字の音読みに対する旧かなづかひ〕も載ってゐます。
『旺文社〜』『明鏡〜』『新明解〜』はスマートフォン向けアプリも販売されてゐます。なほ『旺文社〜』は書籍を買ふと、銀はがし式シリアルコードでアプリ版が無料で使へます。もし正漢字(旧字)も知りたい場合は、その表記も載ってゐる『角川〜』がおすすめですが、内容が古いまま増刷され続けてゐる少々特殊な辞書のため、取扱ひ店舗は少ないかもしれません。
この他に、もし電子辞書などで小学館の『精選版 日本国語大辞典』が使へる場合は、収録語が多く、語誌(語の成り立ちや使はれ方の説明)も充実してをり、活用語の種類も判りやすいので、積極的に使ふことをおすすめします。
各辞書を比較したい場合は(手前味噌ですが)筆者の拙サイトにある「国語辞典の種類と選び方」を参考にして下さい。
用ゐる語をことごとく辞書で調べるのは手間が掛かります。そこで次に示す、かなづかひが異なる場合がある〝現代仮名遣い〟で着目すべき条件を覚えておき、その条件に合ふ語だけを調べると効率的です。逆に言へば、どの条件にも合はない語は正かなづかひと〝現代仮名遣い〟での書き方が同じといふことです。
以下で示す語の例示は〝現代仮名遣い〟での一例です。赤色は付属語、〔 〕内は正かなづかひでの表記を示します。
一般的な文章は漢字かな交じり文で書きますので、慣れないうちは仮名で書く部分だけに注目すれば、調べる頻度を減らせます。
まづは語を素直に調べてみませう。活用語の場合は終止形に直してから調べます。ここでは『教える』を調べた例を示します。
大抵の国語辞典では、見出し語が〝現代仮名遣い〟で、そのあとに小さく歴史的仮名遣ひ(つまり正かなづかひ)の表記が載ってゐます。その表記がない場合は、〝現代仮名遣い〟と正かなづかひでの表記が同じ語といふことです。なほ活用語の場合は終止形だけが載ってゐます。
ここでひとつ注意したいことがあります。調べた語が活用語である場合です。終止形は辞書の通りですが、他の形に活用(変化)した場合の書き方までは載ってゐません。また正かなづかひが表記されてゐない語でも、未然形では活用語尾が〝現代仮名遣い〟とは異なる場合があります。しかし国語辞典の附録にある活用表では「現代仮名遣いの口語」と「文語」の対応しか載ってゐないのが実情です。品詞に「五・上一・下一・形・形動・助動」いづれかの表記がある場合には、当ページの第三章を調べて下さい。
なほ活用語の場合、見出し語には語幹と活用語尾の切れ目が記号(例示の辞書では「・」)で示されてゐます。正かなづかひが表記されてゐない語の場合、語幹の書き方は正かなづかひでも変はりません。表記されてゐる語の場合は、下から数へた同じ字数分が活用語尾、その上が語幹です(例示では見出し語は『おし・える』で、「える」は2文字なので、正かなづかひでは下の2文字「へる」が活用語尾とわかる)。
国語辞典では各語の品詞が略称で表記されてゐます。例へば「五」は「五段活用」を示します。表記の対応表は小型辞書の場合、大抵は表紙をめくった後のページにあります。なほ正かなづかひを調べる上では「自五」「他五」のやうな「自・他」(自動詞・他動詞)の区別は無視して構ひません。
なほ辞書の品詞で「五」「上一」「下一」「カ変」「サ変」と略記されてゐる語は、いづれも動詞です。活用による変化の仕方の違ひによって五種類に分けられてゐます。
辞書によっては、例へば複合語である『見よう見まね』の項目に「みやうみまね」と併記されてゐないなど、一見かなづかひの違ひがないかのやうに読めるものがあります。この場合は「みよう-みまね」のやうに語を分ける記号が入ってゐますので、それを参考に語を分けて調べ直しませう。
また助動詞については、例へば助動詞が連なった形である『だろう』の項目に「だらう」と併記されてゐない、といふ場合もあります。助動詞の正かなづかひについては、辞書だけでなく当ページ第三章も御確認ください。
可能動詞とは、例へば「書く+ことができる」といふ意味の「書ける」のやうに、五段活用から下一段活用に転じて可能を表す動詞のことです。辞書では、可能動詞は元の語に直して調べます。直し方は、活用語尾のエ段をウ段に置き換へて、その後を取り除きます。例へば「書ける」は「書く」に直します。
ここでは、国語辞典では分かりにくい口語における活用語尾と助動詞〔動詞の後につく活用語〕の正かなづかひについて説明します。語によって対応する活用の種類が異なりますので、国語辞典で語の品詞と正かなづかひをよく確認して、対応する項目を参照して下さい。
なほ当項では、〝現代仮名遣い〟と共通する事項については省略し、正かなづかひで書くために留意すべき事項だけを紹介してゐます。国語文法の概要を広く把握するには国語辞典の附録も併せて御覧下さい。
以下では省略のために、正かなづかひを正かな、〝現代仮名遣い〟を現仮名と表現します。例示において助動詞などの付属語の部分は赤色で示します。なほ現仮名の語は二重かぎ括弧『 』の形で示します。
活用語尾の変化規則は《未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形・命令形》の順で示します。ひとつの形に複数の表記がある場合は〔 〕で示します。
動詞には大きく分けて五種類がありますが、口語の正かなづかひで活用語尾の書き方が変はるのは「五段活用」「上一段活用」「下一段活用」の三種類です。「カ行変格活用」「サ行変格活用」の活用語尾は現仮名と同じです。
終止形の活用語尾がウ段ひと文字(く・ぐ・す・つ・ぬ・ふ〔現仮名では『う』〕・ぶ・む・る)の動詞は五段活用です。現仮名の五段活用は、正かなでは四段活用となります。つまり活用語尾にオ段を用ゐません。正かなの四段活用で注意すべきことは以下の三点です。
活用語尾が常にイ段で始まる語は、上一段活用です。そのうち現仮名でア行上一段活用〔終止形の活用語尾が『いる』〕の語は、正かなではハ行(〜ひる)、ヤ行(〜いる)、ワ行(〜ゐる)の三種類に分けられます。国語辞典で調べた正かなの活用語尾(終止形)を確認してください。ただしそれぞれ該当する語は少ないので、比較的覚えやすいと思はれます。
なほ、ヤ行上一段の語は、ア行とヤ行のイ段をどちらも「い」と書くため現仮名と変はりません。このため国語辞典では正かなの併記がありません。
現仮名でザ行上一段〔終止形の活用語尾が『じる』〕の語は、正かなではザ行(〜じる)、ダ行(〜ぢる)の二種類に分けられます。ただし現代の口語では実用上、ダ行の三語を覚えておけば充分でせう。
活用語尾が常にエ段で始まる語は、下一段活用です。そのうち現仮名でア行下一段活用〔終止形の活用語尾が『える』〕の語は、正かなではア行(える)、ハ行(〜へる)、ヤ行(〜える)、ワ行(〜ゑる)の四種類に分けられます。
下一段活用のア行かワ行にあたる語は少ないのですが、ハ行かヤ行にあたる語はそれぞれ多数あります。国語辞典で調べた正かなの活用語尾(終止形)をよく確認して下さい。また当ページの附録〝「〜へる」と「〜える」〟の項も参考にして下さい。
なほ、ア行下一段とヤ行下一段の語は、ア行とヤ行のエ段をどちらも「え」と書くため現仮名と変はりません。このため国語辞典では正かなの併記がありません。また、正かなでア行下一段活用に該当する語は「得る」(もしくは「〜得る」となる語)だけです。そのほかに正かなで「〜える」となる語は、ヤ行下一段活用です。
可能動詞〔「書ける」「押せる」など可能を表す動詞〕は、四段活用(五段活用)の「エ段+る」から下一段活用に転じた語ですが、活用の行は変はりません。正かなでハ行四段活用の語は、その可能動詞をハ行下一段活用で書きます。例へば、「言ふ」はハ行四段活用ですので、その可能動詞はハ行下一段活用で「言へる」と書きます。この場合の活用の仕方は「ハ行下一段」の項を見て下さい。ただし可能動詞に命令形はありません。
終止形が「い」で終る語は形容詞です。活用語尾は《から・かっ〔く〕・い・い・けれ》(命令形は無し)となります。現仮名で『かろ』と書く未然形を正かなでは「から」と書きます。
なほ、形容詞の連用形に「ございます」「存じます」が続くときは、活用語尾は「く」ではなく、現仮名と同じくウ音便を反映して「う」と書きます。ウ音便とは、語中語尾の「く・ぐ・ひ・び・み」などが「ウ」の音になる現象です。例へば「白く」に「ございます」が続く場合、「白うございます」となります。このとき現仮名では、例へば『ありがとう』『美しゅう』『危のう』のやうに語幹の末尾も変化しえますが、正かなでは語幹は一切変化しません。
後に「だ」を付ければ終止形になる語は形容動詞です。活用語尾は《だら・だっ〔で・に〕・だ・な・なら》(命令形は無し)となります。現仮名で『だろ』と書く未然形を正かなでは「だら」と書きます。
助動詞における現仮名と正かなの主な違ひは以下の通りです。
以下に、現仮名と正かなで書き方が変はる主な助動詞を表の形で示します。
| 種類 | 語 | 用例 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 断定 | だ | 雨- | だらう | だった である |
だ | (なので) | ならば | ○ |
| です | でせう | でした | です | (ですので) | ○ | ○ | ||
| 打消 | ない | 許さ- | なからう | なかった なくて |
ない | ないので | なければ | ○ |
| 丁寧 | ます | 書き- | ませう | ました | ます | ますので | ますれば | まし ませ |
| 様態 | さうだ 『そうだ』 | 降り- | さうだらう | さうだった さうである さうになる |
さうだ | さうなので | さうならば | ○ |
| 伝聞 | さうだ 『そうだ』 |
あった- | ○ | さうである | さうだ | ○ | ○ | ○ |
| 比況 (たとへ) |
やうだ 『ようだ』 |
雪の- | やうだらう | やうだった やうである やうになる |
やうだ | やうなので | やうならば | ○ |
意志・推量の助動詞「よう」は、正かなでも「よう」です。「ませう」や「てやらう」に置き換へても違和感がない語は「よう」のままです。
一方、「様」の字音仮名遣「やう」に由来する(つまり漢字で「様」と書ける)語は、「やう」で書きます。比況の助動詞を「やう」で書くのも同じ理由です。
「いる(入る・要る)」と「ゐる(居る)」は別の語です。活用も違ひます。
例へば「未然形+ない」は、「いる」は「いらない」、「ゐる」は「ゐない」となります。つまり「いない」や「ゐらない」とはなりません。
「いる」は一般的に漢字を宛てて「入」と「要」で書き分けますが同源の語です。
なほ「いらっしゃる」は、文語「いらせらる」〔入るの未然形「いら」+せ+らる〕から転じたラ行四段活用の動詞「いらっしゃ・る」と捉へます。「いらっしゃい(ませ)」のほか、「ゐる」の尊敬語として用ゐるときも、この語幹は変はりません。
下一段活用のハ行(〜へる)とヤ行(〜える)にあたる動詞は、それぞれ該当する語が多いため、なかなか覚えづらく間違へやすい部分です。そもそも下一段活用がハ行かヤ行かの違ひは、文語(下二段活用)での終止形が「〜ふ」か「〜ゆ」かの違ひによるものです。例へば「与へる」の文語は「与ふ」、「消える」は「消ゆ」、といふわけです。しかし現代では文語をあまり使はず、なかなか覚えづらいのが現状です。とはいへ、ヤ行下一段の語のはうが比較的少ないので、そちらを優先して覚えると良いでせう。
ヤ行下一段の語のうち、派生語に他動詞〔「作用の対象+を」に続く形の動詞〕として「〜やす」または「〜やかす」の形をもつ語があります。これらの語は、例へば「冷やす」があるから「冷える」と書く、といふ覚え方が出来ます。
この他に、次の語も文語では「〜ゆ」の形ですので、ヤ行下一段活用です。
なるべく基本的で文字数の少ない語から覚えておくと、連用形を伴ふ語のかなづかひを調べずに済みます。例へば『言う』を「言ふ」と書くハ行四段活用の動詞だと覚えておけば、その連用形は「言ひ」ですから、「言ひ訳」「言ひ方」「言ひ草」などの語はことごとく「言ひ」と書けばよいことがわかります。
また同様に、様々な語が二語の組み合はせで出来てゐると知っておくのも良いでせう。特に語頭〔語の一文字目〕の「わ」と「う」は現仮名と正かなで同じですので、一見すると語中語尾にある「わ・う」が実は二語目の語頭であって、故に「は」や「ふ」では書かないと理解できます。例へば「ことわる(断る)」は判断するといふ意味の「こと・わる(言・割る)」で出来てゐるため「ことはる」とは書きません。
次の〝現代仮名遣い〟で書かれた文を正かなづかひに直してみませう。文をクリックすると答へが出ます。
答「子供が書いたやうな字だね。」
答「何を食べようか、迷ってしまふ。」
答「何を言はうが、何をしようが、関係ないだらう。」
正かなづかひで書くにあたって、「あった」や「ぢゃあ」のやうな促音と拗音の書き方を決めておくとよいでせう。
筆者は促音や拗音を明示したはうが解りやすいと考へて、それらを小書きする方法(捨て仮名)を採用してをり、それはこの文書でも同様です。一方で〝現代かなづかい〟が内閣告示によって普及する前まで一般的であった慣例を引き継いで「あつた」「ぢやあ」のやうに大書きする方法もあります。正かなづかひの実践者が現在もSNSや出版等で用ゐる表記を見る限りでは、後者が主流です。
なほ正かなづかひに対応した日本語入力ソフトでは、概ね両方に対応してゐます。
第一章で挙げた例文の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」は、捨て仮名の違ひを除けば仮名遣ひによる違ひのない文です。また当文書の冒頭にある「このページは〜お役立ていただければ幸ひです」の段落では、「現代仮名遣い」「正かなづかひ(歴史的仮名遣ひ)」といふ固有名詞を除くと、最後の「幸ひ」だけが正かなづかひ特有の書き方です。
このやうに実際の文において仮名遣ひの違ひがみられる語は、往々にして全体の一割程度ではないかと思はれます。